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日記

平成28年5月21日の日本昔話

とうせん坊

昔、一本足の高下駄を履き、松明を持ったとうせん坊という大男が村を暴れ回っていた。
彼が物心付いた時すでに両親は無く、北上川上流の小さな寺に預けられていたが、大柄で頭が足りなかったので和尚や坊さんや子供達に「うすのろ」「でくの坊」等と苛められて育った。そんな連中を見返してやりたいと思ったとうせん坊は、観音堂にこもって祈り続けた。満願の日、観音様が差し出した手まりを食べた彼は百人力を授かった。
早速村の奉納相撲に参加したが、気付いた時には有り余る怪力で対戦相手を次々と殴り殺してしまっていた。
今度は「人殺し」と罵られ、彼は山に一人引きこもった。
しかし村の若者達が住処を見つけ、彼の留守中に仕返しとばかりに鍋に糞をして帰っていった。
帰宅後これを知った時から、とうせん坊は暴れ者と化した。村に来ては家に火を付け、家畜を絞め殺し、村の花見の時も大人子供関係無く、怪力で殴り殺して回った。
やがて彼は村を出て、越前の「東尋坊」と言う岬に来た。
ここの眺めが気に入った彼は、そこで宴会をしている優しそうな村人達に酒を勧められた。久方ぶりに人の優しさに触れた彼は酒に酔い、夢の中で母親の子守唄を聞いていた。
しかし気付いた時彼は縄で縛られ、村人達に担ぎ上げられ崖へと運ばれていく所だった。
彼の涙も「おっかあ・・・」と言う呟きも、みんな彼ごと崖下に消えていった。
この事があってから東尋坊で吹く強風は「とうせん坊」と呼ばれ、恐れられる様になった。とうせん坊の怨念は、今も海上で吹き荒れている。
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