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日記

平成28年7月14日の日本昔話

まよい家

昔、岩手県の小国(おぐに)という村の貧しい家に、お久仁(おくに)という嫁がいた。
お久仁は、言われたことは何でもハイハイといって聞く素直な嫁さんだったが、少し頭の足りないところがあった。
ごはんを炊かせれば、ごはんが炊き上がってもまだ火を焚き続け、ごはんは真っ黒こげ。
風呂の用意をさせれば、風呂桶に一杯に水が入ってもまだ水を汲み続けたりと、まあこんな調子だった。
それでも夫の南吉(なんきち)は、こんな貧乏な家に来てくれたお久仁のことが大好きだった。
ある初夏の日、辺りに生えていたフキノトウを見て南吉は言った。「ここら辺のフキはかたくてダメだ。
やわらかいフキならうまいだろうに。やわらかいフキをたらふく喰ってみたいもんじゃ。」
これを聞いたお久仁は、やわらかいフキを求めて谷川の上流に向かって歩きだした。
こうして山の奥へ奥へと進んで行くと、突然黒塗りの門を構えた立派な屋敷が現れた。
屋敷の庭には、色とりどりの花が咲き乱れていた。花の大好きなお久仁は、「花を見せてもらいてえだども。」
と言って屋敷の庭に入った。
広大な庭には厩もあり、たくさんの馬や牛が繋がれていた。ところが、どうした訳か人っ子一人見当たらない。
不思議に思って、お久仁は玄関から屋敷に上がってみた。屋敷は大きさもさることながら、屋敷の中の豪華さも一際だった。
天井には鮮やかな絵が描かれており、たくさんの置物は見とれるように美しかった。
座敷には、まるで客人をもてなすかのように、立派なお膳とお椀にご馳走が載せられ湯気を立てていた。
そして奥座敷の茶釜には湯が煮えたぎっている。それなのに、やはり人の姿はどこにも見当たらない。お久仁は、もしや山んばの家ではないかと思うと急に恐ろしくなり、一目散に自分の家に向かって逃げ出した。
それからしばらくして、お久仁が家の前の小川で洗い物をしていると、川上から朱いお椀が流れて来た。
お久仁には思い出せなかったが、これはあの屋敷にあったお椀だったのだ。
あまりにきれいなお椀だったので、お久仁はこのお椀を米びつに入れ、米を計る器にした。
ところが、不思議なことにこのお椀を入れてからというもの、米びつの米が減らない。
南吉とお久仁が米びつを見てみると、何と二人の見ている前で、米びつの中の米が増え始め、米びつからあふれ出たのだった。
昔から小国の村には「まよい家」の伝説があり、心のきれいな人は、山中でまよい家に行き当ると言われている。

そしてその屋敷に有る物の内、1つだけを持ち帰ると福を授かるのだと言う。
しかし、お久仁は無欲で何も持出さなかった為に、まよい家の方から椀を流してくれたのだろうと南吉は思った。それからというもの、二人の家には良いことが続き、家はたいそう栄えたということだ。
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