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日記

平成28年10月29日の日本昔話

種なしの柿

昔、ある所に1本の柿の木を大事に育てている若者がいた。 この柿の木は毎年実をたわわに付けていたが、今年はどうした訳か、たった1つ実を付けているのみだった。
見たところ、柿の木は特に傷んでいるわけでもなさそうだった。
ところが翌朝、若者が起きて家の戸を開けてみると、なんと若者の目の前には巨大な柿の実があった。1つだけ付けた柿の実は、一晩のうちに家よりも大きくなっていたのだ。
若者が試しに、巨大な柿の実をポンポンと手で叩いてみると、「待った、待った。」
と柿の中から声が聞こえた。若者は不思議に思い、柿の実に耳を近づけてみる。
すると、どうやら中では2人が五目並べをしているようだった。
この若者、実は三度の飯より五目並べが好きだったので、いてもたってもいられなくなった。
どこかに入口はないかと柿の実を調べてみると、一ヶ所だけ手がすり抜ける場所があった。すると、若者はその場所からあっと言う間に柿の中に吸い込まれてしまった。
柿の中では、若者が思った通り老人と若い男が五目並べをしており、若い男の方が苦戦しているようだった。
そこで若者は男の後ろにそっと近づき、男に逆転の一手を教えた。
ところが、若者が身を乗り出したため対戦相手の老人に見つかってしまい、2人は勝敗をめぐって喧嘩になってしまった。
仕舞いには、若者のせいで勝負が台無しになったと言うことで、若者は2人から追いかけられる羽目になった。
2人は、碁石を若者に向かって投げつけながら追いかけて来る。
若者は柿の実の外に出て、野原の中をどこまでも逃げるが、それでも2人は碁石を投げながら追ってくる。
とうとう若者は石につまづき転んでしまい、気を失ってしまう。
翌朝、若者は自分の家の前に倒れていた。若者が気づくと、巨大な柿の実は消えており、若者の傍らには隣の娘さんが心配そうに若者をみていた。
若者は、夢でも見ていたのだろうかと思うが、若者の周りには2人から投げつけられたと思われる碁石、いや柿の種が散らばっていた。
若者はこの事がきっかけで、隣の娘と結婚し子供までもうけた。
翌年の秋、柿の木はいつものようにたわわに実をつけた。ところがどうした訳か、柿の実の中には1つも種がないのだ。
これを見て若者は、柿の種は老人と男が全部投げてしまったので、無くなったのだろうかと思うのだった。
この種なしの柿は珍しいので、近隣で評判になり、そのおかげで夫婦はずいぶんお金がたまったそうだ。
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